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落とし穴に落ちた話

人の性格について
やさしいとか冷たいとよく言いますが
これは非常に微妙な問題です。

まして
やさしいからよい、
冷たいから悪いと
二元的に判断することはできないと思います。

お風呂の湯かげんのようなもので
熱すぎてもぬるすぎてもよくない
という面もあります。

それに表面に表されるやさしさが
本物かどうかという問題もありますよね。

さて、前回の続きです。

父の郷里に帰ったものの長い間
ほうっておかれました。
父は郷里の兄弟や親戚の人たちと
お酒ばかり飲んでいたからです。

小学一年生ですから
一人であちこち歩き回ることもできません。
せいぜい裏山に遊びにいくぐらいしかできず
ひどく退屈しました。

「ボク、退屈だな。お父さん、酒ばかり飲んでて」
と親戚の人にも同情されました。
といって、父に抗議もできませんでした。

何日かたって父はようやく
私を連れ出してくれました。
田んぼの中を歩き
わけのわからない山の
草深く生い茂った中に入っていきました。

かなり深く入っていったところで突然
父が消えました。
あっ。
何がなんだかわかりませんでした。
お父さん!
必死に目を凝らしても
濃い緑の草ばかり。

父はすぐに笑って
私の足元から顔を出しました。
大きな穴に落ちたのでした。

村の人が
イノシシを捕るためにつくった落とし穴に
落ちたのでした。

ほんの一瞬のことでしたが
いまだに
穴から顔を出した父の顔、
その光景を鮮明に覚えています。

今になって思います。
なぜあんなところに行ったんだろう、と。

おそらく、子供の頃遊んだ山に
行ったのではないかと思います。


| 日記

こわそうね

「こわそうね」
と、しっかりしたお姉さんもさすがにびびったのでした。
その反応は意外でした。
実際は全然怖くないのです。
けれども当時、父は刑事で、
年齢は、計算してみると37歳ぐらい。
仕事柄、怖い目をしていたのだと思います。

それでもお姉さんは勇気を出して、
僕を連れて父のところに行きました。
「すみません。一緒に遊んでいて、転んでしまったんです」
父は特に何を言うでもなく、むすっとして
僕のズボンとパンツを替えさせてくれたのでした。

怒るでもなく、慰めるわけでもなく
ただ無愛想なのです。

それでいて厳しいかというと、
叱ったり、説教したりもほとんどない。
そういうことができない性質なのです。
僕もそうだから、よくわかるのです。

叱らないから優しいかというと
それはまた別の話です。
| 日記

青函連絡船

父といえば、自分も父になっていますが
全然ダメ父なので、それはよしとして、
自分が息子時代の父の思い出を記してみようかな。
といって、今も息子であり、父であるのだけど。

小学校1年生のときに、
父の郷里である秋田に
二人で行った。

函館から青函連絡船に乗っていく途中、
甲板で偶然、同じ小学校の6年生のお姉さんに
会ったのだった。
6年生が1年生を世話するような機会があり、
それで互いによく覚えていたのである。

「あ、Nくん!」なんて言われて、うれしくなり
一緒に甲板やらデッキを走り回って遊んでいると
波しぶきがひどくて床がぬれていたこともあり
派手に尻餅をついてしまった。
半ズボンのお尻はびしょびしょ。

そのときの僕にしてみれば、
そのお姉さんはものすごく大人に見えた。
「大丈夫」と世話をしてくれ、
そのまま別れてもよかったのに、
僕の父に謝らなければならないと言い張るのだ。

「お父さんと来ているの。どこにいるの?」と
お姉さんは言って、まずは遠くからこっそり、
僕の父の様子をうかがった。

父は座敷に横になっていた。
「怖そうね」と、少し怖気づいたように言った。

続きはまた、後ほど。
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